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中央ニュース

2021/08/14

建設トップランナーフォーラム(5) 

 企業理念に「多様な価値観の尊重」を掲げる松下産業(東京都文京区)は、健康経営や病気と仕事の両立支援、人材育成、ワーク・ライフ・バランスなどさまざまな面からの取り組みが評価されている。松下和正社長は2020年に民間で初めて日本対がん協会朝日がん大賞を受賞した「治療と仕事の両立支援」の取り組みを紹介した。
 社員をワンストップで支える仕組み「ヒューマンリソースセンター」を13年に新設した。取締役会直下のラインから独立した組織とし、直属の上司には話しづらい相談なども役員や部門長との個人面談などを通じて解消しようという取り組みだ。
 ヒューマンリソースセンターのスタッフは国家資格キャリアコンサルタント取得者とベテラン技術者で構成しており、社員や家族の人生を全面的にサポートする。資格の取得やキャリア、育児、退職後のキャリアやマネープラン、介護、がんを含む病気と仕事の両立など相談内容は多岐にわたる。
 同社では、過去10年間に健康検診でがんが見つかり、就業継続した社員が15人いる。従業員数237人のうちの罹患(りかん)者としては平均的な数字で、この割合よりも少ない会社は「がんを申告していない社員がいるかもしれない」と考えた方がいいという。松下社長は「会社が見捨てない姿勢を見せ、社員の不利益にならないように図れば、社員は病気を申告するはず」と話す。
 がんを申告した社員には、センターが外部のがん相談支援センターや弁護士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーなどと連携し、その社員と家族を支える。がんにかかった社員は自分ができる仕事を担い、周囲もそれを当たり前のことと理解してサポートしている。
 がんと仕事の両立のため、まず本人や家族と直接話し、要望を聴取する。それから産業医も加わり、連携を取る。また、家族を職場に呼んで現場見学を行う他、相談制度を紹介する。在宅勤務でも働ける仕組みづくりやGLTD(団体長期障害所得補償保険)の加入、がん検診の実施もサポートするなど、手厚く支援している。
 松下社長は「建設業界の魅力は健康に働ける若いうちに現場で技術を磨き、年齢を重ねた後は、たとえ倒れたとしても在宅で働けるところにもある」と語る。会社にとっても「会社や仕事を熟知する社員に長く働いてもらうことはメリット。社員が長く働けるように工夫していくべきだ」と結んだ。
(地方建設専門紙の会)