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2023/08/24

処遇確保は建設業者の努め 制度化を提案

 国土交通省は、建設業者に対して、労働者の適切な処遇確保に努めるよう求めるため、制度を改正したい考えだ。標準労務費※に基づく水準での、技能者への賃金の行き渡りを目指す。8月23日に開いた中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会で、中間とりまとめ案として提示。持続可能な建設業へ早急に講じるべき施策とした。
 賃金の行き渡りについて国交省は、これまでの議論で、標準労務費を中央建設業審議会が作成・勧告することを提案。請負契約での労務費の相場観を示すとともに、労務費を原資とした不当な価格競争(廉売行為)の規制基準にするとした。併せて、建設工事の標準約款に、適正な賃金支払いへのコミットメント(表明保証)や賃金開示への合意に関する条項を追加し、技能者への賃金の支払いをより確実なものとする。
 さらに、標準労務費を下回るような労務費を計上した、受注者による不当に低い請負代金での契約を禁止し、違反事業者に勧告できる制度改正が必要ともした。不当に低い請負代金の禁止を運用する際は、標準労務費を一定程度下回る労務費を計上した請負契約を抽出することとし、今後、その方法を検討していくとした。
 そこで、建設業者が労働者の処遇確保に努めるよう法令上に規定し、こうした方策の実効性を担保する。
 国交省では、標準労務費に基づく適切な賃金相当額が技能者に支払われているかなど、建設工事の請負契約に関する情報を広く調査・整理する制度を設けるべきともしており、調査の根拠とする狙いもある。
 調査制度を設ける際は、不適切な契約の是正を促すための組織体制を省内に整備する。技能者への賃金行き渡りを確認する仕組みとして、ICTの活用も検討するとした。
 会合では、「適切な労務費や賃金行き渡りの確保・担保」「請負契約の透明化による適切なリスク分担」「魅力ある就労環境を実現する働き方改革と生産性向上」での、早急に講ずべき施策の方向性を議論した。
 中長期的に検討すべき事項としては、▽重層下請け構造に起因した技能者への不利益の発生▽建設業許可の合理化▽繁閑に応じた労働力の需給調整の在り方▽多能工の活用の考え方▽建設業許可を要しない小規模工事の従事者の実態把握、適切な管理の枠組み―などを挙げた。
 基本問題小委員会は次回会合で最終の取りまとめを行う。その後、中建審への報告を経て、国交省で制度改正の具体作業に着手していくことになる。
※標準労務費は、単位施工量当たりの標準的な労務費として、請負契約での労務費の相場観を示すもの。工種・歩掛ごとの「標準的な規格(仕様・条件)」を特定した上で、公共工事設計労務単価にその歩掛を乗じて算出する。中央建設業審議会が作成・勧告することで、労務費を原資とする廉売行為を制限し、公正な競争の促進、技能者への賃金の行き渡りにつなげる。

提供:建通新聞社