トップページお知らせ >中央ニュース

お知らせ

中央ニュース

2024/01/22

CCUSモデル工事 不適正な運用7割近く

 地方自治体をはじめ公共発注機関による建設キャリアアップシステム(CCUS)活用モデル工事で、受注者が登録技能者の就業履歴の蓄積に取り組んでいるものの、能力評価に利用できないデータが蓄積されるといった不適正な運用のある現場が多数あることが、建設業振興基金の調査で分かった。ある県内の公共工事では、7割近くの現場が不適正な運用状況にあった。振興基金の担当者は、「優良な事例を横展開することで、より多くの受発注者にCCUSに対する理解を深めてもらい、モデル工事の運用改善につなげてほしい」と話す。
 振興基金がある県内の公共工事を対象に就業履歴の蓄積があった現場387件を抽出。その蓄積数上位12現場の運用状況を調べたところ、全体の67%の現場で運用に問題が見られた。
 具体的には、6現場で就業履歴に登録技能者の所属事業者や職種・立場が反映されていないなど、不適正な就業履歴が見つかった。
 別の2現場では、施工体制技能者登録が不完全といった不備があった。せっかく蓄積した就業履歴だが、これら不備のあるデータは、「能力評価に有効な就業履歴」とはみなされないという。
 こうした実態について振興基金の担当者は、「能力評価に有効な就業履歴を蓄積するという、CCUS本来の目的達成に不可欠な取り組みが、発注者や元請けに理解されないまま、モデル工事が運用されている。理解を深めてもらい、運用方法を見直す必要がある」と焦りを隠さない。背景には、2024年4月1日以降の能力評価の経歴判断が、CCUSに蓄積された就業履歴データのみとなることがある。
 CCUSは、登録技能者が自身のカードを現場入場の際にカードリーダーにタッチすることで、就業履歴を蓄積するもの。登録技能者はその就業履歴などを基に能力評価を受け、技能レベルに応じた処遇の実現を目指す。登録技能者はすでに130万人を超え、普及促進から活用促進(就業履歴の蓄積)の段階に入っている。しかし、カードリーダーを設置するだけで加点するなど、普及促進に力点を置いたモデル工事を続けている発注機関も少なくない。能力評価に有効な就業履歴の蓄積を評価する運用改善の広がりが急がれる。

<埼玉県のモデル工事が優良事例>

 すでにモデル工事の評価内容を改めた発注機関もある。埼玉県は、23年12月にモデル工事の試行要領を改定した。受注者に求める実施(評価)項目を従前の4項目から、能力評価に有効な就業履歴の蓄積に最低限必要な「技能者情報登録」「就業履歴情報登録」の2項目に整理。受注者は基本的に作業員名簿をCCUSで管理するだけでよく、就業履歴の確認に必要な書類(就業履歴月別カレンダー)もCCUSから簡単に出力できる。受発注者双方の事務負担を大幅に軽減。不備データの蓄積防止にもつながるという。
 振興基金では、埼玉県の取り組みを優良事例と捉え、県のモデル工事を受注した元請けを対象に、カードリーダーの無償貸与サービスを開始した。募集上限は200社。応募申請フォーム(https://forms.gle/t69a9Ntoh9emnyh46)から申し込みを受け付けている。

提供:建通新聞社