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2015/10/09

私たちの主張、高校生作文コンクール 国土交通大臣賞(3)

「私たちの主張」国土交通大臣賞

「先輩の言葉・そして誇りに思える仕事」菅野勇也(小野良組)

 私は、建設業に携わって13年余りが過ぎようとしています。私が所属する部署は、国道維持という建設業の中でも、とても特殊な部署で入社から13年間毎日奮闘しています。まず、業務内容は通常の道路維持から始まり落下物(動物の死骸処理)・地震・津波・大雨・台風・土砂崩れなど自然災害における災害復旧や交通事故処理での早期交通解放を24時間365日対応しています。

 配属された当時は、災害現場のわざわざ危険な場所に向かっていくことに、「これでは自衛隊・消防・警察と変わらないじゃないか!民間企業で常に危険と隣り合わせの業務だし、ゆっくり寝てもいられない!こんな仕事辞めてしまいたい」と思いながらも毎日の現場で汗を流す日々が続いていました。

 そんな私も、結婚し妻のお腹にも新しい命を宿し「もっと仕事を頑張っていこう!」と思った矢先、忘れる事も出来ない災害が発生しました。東日本大震災です。地震が発生した直後のライフラインがすべて不通になる前に、なんとか妻と連絡が取れ「大丈夫か?」の問いかけに「私は大丈夫!でも、お腹の子が心配だから傍に居てほしい」と言われましたが、自分の職務上帰るわけにも行かず、緊急災害復旧の準備を始めました。準備をしながら、「なぜ自分は、こんな時に家族の傍に居てあげられない!こんな仕事は辞めたい」と昔の自分が蘇ってきました。

 その時点でライフラインは不通になり、私がいる地域は橋が落ち、完全に陸の孤島になっていました。悶々としたまま作業を行い、このままではダメだと思い職場の先輩に相談しました。
 「危険な災害発生現場に行っても何の見返りもない!家族の傍にいてあげたい。仕事を辞めたい。」と取り乱した自分に、先輩は冷静に言ってくれました。「俺も家族の元へ行ってあげたい!でもこの職務を遂行出来るのは俺達の部署しか居ないじゃないか。一緒に頑張ろう!その壁を乗り越えたら倍以上の物が必ず返ってくるから、力を貸してくれ」その言葉で自分の悶々とした気持ちが、はじけ飛びました。

 それから連日の災害復旧を現場で汗を流しながら奮闘する日々が続き、子供も無事生まれてくれました。二人の子供にも恵まれ、より一層この仕事を頑張らないといけないと思うようになりました。上の子も幼稚園に通うようになり、休日に遊んであげたい反面、緊急出動の一報がくれば仕事に行くことが続いたある日、子供に「今日は、お休みって言ったじゃない。お仕事行かないで!」と言われてしまいました。 私は諭すように「困っている人を助けに行くのだよ!」と、そして心の中で「ごめんね」と言って仕事に向かいました。それから月日が経ち、大雨による土砂崩れの災害で緊急出動し現場で重機を搬入している姿を、妻が子供に見せたいと思い、私は気付きませんでしたが近くを通ったそうです。 仮の復旧が完了し自宅に帰った時、もう子供は寝ている時間のはずなのになぜか起きていました。私は「どうして寝ないの?」と聞くと、「父のお仕事カッコいいね!頑張ってね。おやすみ」と言って子供はすぐに眠りにつきました。妻の粋な計らいに感謝しつつ、子供にカッコいいと言ってもらえたことが嬉しくもあり、自信にも繋がりました。

 そんな私も今では、現場代理人として現場管理に新人の教育に日々奮闘している毎日ですが、休日の緊急出動の際には子供にも「困っている人を助けてきてね!頑張ってね!」と背中を押してもらっている自分がいます。そこで先輩の一言を思い出しました。「壁を乗り越えたら倍以上の物が、必ず返ってくる!」これは自分にしてみれば、子供に「頑張ってね!」と言われたら、これ以上の励みになることはありません。頑張ってきたからこそ、言ってくれた最高の見返りなのだと思います。

 私の仕事は、他の建設業と違い形に残らない仕事かもしれない。ですが、子供にとって父親の仕事が誇りに思えるようであり続けたいと自信を持って頑張っていきたいと思います。そして、これからも新入社員も増えてきているので「壁を乗り越えたら倍以上の物が、必ず返ってくる!」その言葉とともに、形に残らないどんな仕事でも家族や子供たちに必ず誇りに思ってもらえる仕事であると伝えながら、新人育成にも生かしていきたいと思います。