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2016/03/07

技術者の配置要件緩和 生産プロセスの将来に道筋を(建通新聞社・建滴)

 国土交通省は技術者配置の金額要件を緩和する。特定建設業の許可や監理技術者の配置が必要な下請契約金額と、専任の現場配置(主任、監理)技術者が必要な工事の請負代金額の下限をそれぞれ引き上げて、技術者の効率的な配置を実現するためだ。閣議決定した上で4月上旬に建設業法施行令の一部改正を公布し、6月1日に施行する予定でいる。

 具体的に見ると、下請契約金額の下限は3000万円から4000万円(建築一式は4500万円から6000万円)、請負代金額の下限は2500万円から3500万円(建築一式は5000万円から7000万円)に引き上げる。これに伴って、一般建設業の許可や主任技術者の配置で下請けと契約できる金額と、専任の現場配置技術者を必要としない請負代金額の上限がアップする。

 民間工事で施工体制台帳の作成が必要な下請契約の請負代金額の下限についても、特定建設業の許可や監理技術者の配置に関わる下請契約金額のそれと合わせることにしている。 

 現行の金額要件は今から20年以上前の1994年度に定められたもので、物価率(建設工事デフレーター)や消費税率が上昇しても据え置かれてきた。その間、長引く不況で建設業の経営環境は悪化し、若年入職者の減少などによる担い手不足も深刻化している。

 今回の緩和はこうした建設産業内外の環境変化を反映したもの。特定と一般の建設業許可、主任と監理の技術者、元請けと下請けそれぞれの立場で「担える仕事」を大きくし、デフレ脱却局面を迎えた足元の建設需要に応えることはもちろん、将来にわたって社会資本整備を推進できる体制を維持・確保するのが狙いだ。

 業界にとっては企業の経営体質強化や技術力の向上、技術者のモチベーション醸成といった効果が期待される。

 一方で国交省は、横浜市のマンションに端を発した杭施工データ流用問題を受けてこの要件緩和を再検討していた。技術者を効率的に配置しようとするあまり、元請けの実質的関与に代表される「適正な施工体制」の確保がおろそかになっては元も子もないためだ。

 また、今回の緩和を受けて小規模工事を多く発注する自治体が、技術者の専任による「安心感」を求めてロット拡大に動く可能性がある。スケールメリットを生かして人手や資機材が確保しやすくなる反面、元請けの中小企業にとっては資金調達の負担感が増す。

 結果として地域建設業の受注機会が減るような事態を回避するためにも、国交省は自治体に対して▽技術者の兼務▽多様な入札契約方式の採用▽前払金の全額支払い―といった善後策を講じるよう、一層働き掛ける必要がある。

 2015年の国勢調査で日本の人口が調査開始以来初めて減少したことが明らかになった。さまざまな規制の見直しや施工の合理化に取り組まなければ、人口減少社会の下で必要な社会資本整備を着実に進めることはできない。

 技術者配置をめぐる今回の緩和を次へのステップとして、日本の将来が展望できる建設生産プロセスの在り方とその道筋を早急に具体化したい。