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中央ニュース

2016/06/06

国土を「測る」「描く」「守る」 〜第2回 災害規模の把握、公開も任務〜

 国土を測る、写す、図化する―これらのプロセスを通して、国土と国民の安全・安心を守ることも国土地理院の大切な仕事だ。越智繁雄院長に、頻発する災害への対応を聞いた。

 ―国土地理院は、測量法、地理空間情報活用推進基本法に加え、災害対策基本法にも関係している。

 「私たちには、災害の規模を早期に把握して、公開するという任務がある。2015年9月に発生した鬼怒川水害(関東・東北豪雨災害)では、現場でいち早くUAV(ドローン)を飛ばし、破堤直後の状況を国民に知らせるとともに、災害対応に当たっている関係機関に情報提供を行った。また、氾濫域を把握するため、くにかぜVを毎日飛ばして浸水区域を撮影し、それを図化して防災関係機関や地方自治体、被災者に提供した」

 「その際、私たちは三つの観点を意識した。一つは被害の状況を関係者に正確に把握してもらい、災害復旧を迅速かつ円滑に進めて被害を最小化するということ。二つ目は収集した情報を記録として残すことが次の災害への備えになるということ。そして三つ目は、家屋が浸水し、避難を余儀なくされた被災者のみなさんに浸水域が減っていく状況を毎日見てもらい、復旧や生活再建に向けた元気や勇気を出してもらうことだった」

 「今回の熊本地震では、前震の発生(4月14日)を受けて、翌15日早朝にはUAVを使った空中撮影部隊『ランドバード(GSI―LB)』に対し、被災地への派遣命令を出した。鬼怒川水害での経験などを踏まえ、UAVによる情報収集の効果を確信していた私たちは、今年3月に同部隊を正式に発足させていたのだが、これがさっそく生きた。4月16日には本震によって発生した阿蘇大橋付近の土砂崩壊の状況や地表面の断層写真を撮影し、関係機関や国民にいち早く情報提供した。くにかぜVも空中写真の撮影に投入。これまで被災地で撮影した枚数は約1万枚に上る。その多くは、災害応急対策活動を展開している自衛隊や警察・消防に、A4の紙が判読できるぐらいの精緻なオルソ画像で提供し、救命・救助に活用してもらった。発生したがれき類など災害廃棄物量の把握などにも役立ててもらっている」

 「熊本地震に限らず、災害応急対策に当たる関係機関からの空中写真のニーズは多い。山間部の土砂災害危険個所や倒壊建物の把握もでき、被災者がり災証明を発行してもらう際には参考資料としても活用できる。今回の地震で国土地理院は、だいち2号のデータを使った干渉SAR(合成開口レーダー)による地殻変動の解析データなども提供したが、その解析データと水準測量の計測データがおおむね一致し、衛星データがこうした災害応急対策の場面でも使えることが確認できたことは、これから起こる災害への備えという意味でも大きい」

提供:建通新聞社