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2018/06/26

連載「どう生かす 建設キャリアアップシステム」第6回

■第6回 明確な処遇モデルを示すべき
 スチール・ワン 小田桐健社長(前神奈川県鉄筋業協同組合理事長)

 技能者の処遇改善や、技能の研さんを目指す「建設キャリアアップシステム」の登録申請受付がスタートして1カ月余が経過した。システム構築の目的は、技能者の経験や技能に応じた処遇を実現し、これに連動させて専門工事業の施工能力を「見える化」することにある。だが、その専門工事業の中には、自社の経営や抱える技能者のメリットが明確にイメージできないなどとして、今秋の運用開始を前にとまどいを見せる経営者が少なからずいるようだ。5月まで神奈川県鉄筋業協同組合の理事長を務めたスチール・ワン(横浜市)の小田桐健社長に、専門工事業のシステムに対する認識や、運用に向けての要望などを聞いた。 小田桐社長(建設キャリアアップ連載)_1

 ―システムをどのように捉えていますか。
 「処遇改善に向けた取り組みは、われわれが望んでいたことであり、目指している方向性は賛成だ。入職してくれる若い人たちに『このようにステップを踏んでいく仕事ですよ』と示すことができれば、と思う」
 「とはいえ、時間的な猶予がないというのが本音だ。現状では、事業者にとって、そして技能者にとってのメリットを明確に感じられるところまでに至っていない」

 ―神奈川県内の鉄筋工事業における認知度と、その対応状況は。
 「理解は進んでいないように感じる。これまで、身近なものとして捉えることがなく、『これから勉強しましょう』という企業は多い。システムに関する説明は幾度か受けてきたが、『質疑の時間』がなかったことも影響しているのかもしれない」
 「一方で、われわれの動きが遅いのでは、との思いもある。このため、他業種の団体などと情報を共有し『連携して声を上げていこう』という動きも出始めている」

 ―個社として、システムにどのように対応しますか。
 「まずは、事業者として登録しようと考えている。だが、技能者レベルとなると、判断する材料が足りず、経営者として説明することもできない。技能者は4段階で能力が評価されるというが、それぞれの層にどのような影響を及ぼすのだろうか。経営者としては、一番層の厚い中堅的な立場にいる社員たちがシステムをどう受け止めるのかが気に掛かる」
 「専門工事業にとって、技能者の情報が『見える化』することへの不安は大きい。本当に全ての情報が必要なのか、閲覧ルールはきちんと守られるのか。情報がどのように流れるのか想像がつかず、どうしても『引き抜き』や『囲い込み』を心配してしまう」

 ―ゼネコン側から登録を求める声はありますか。
 「直接的にはないが、登録を促すような雰囲気は感じる。また、登録した下請け企業に対して優先的に発注しようとしているゼネコンがある、との話も聞く。ゼネコン各社ともシステムへの対応について、話し合いたいと考えている」

 ―国土交通省や建設業振興基金には、何を望みますか。
 「業界のためというならば、一方的な説明に終わらせず、それぞれが納得できるまで各業種と対話すべきではないか。業種ごとの技能者について、明確な処遇モデルが示されてしかるべき、とも思う。また、週休2日制の導入など働き方改革への取り組みにも共通するが、処遇を改善するためには、鉄骨造や鉄筋コンクリート造など現場ごとに異なる工程を考慮した上で、平準発注が不可欠だ」
 「システムが稼働した後に、『走りながら』改善していくのではなく、意見を事前にすり合わせることが必要だ。そうすれば、われわれも、ゼネコンも、そして国も努力すべきことが分かり、より良いシステムが構築できるのではないか」